【第4回公認心理師試験に向けた学習スケジュール】

皆さんこんにちは。ファイブアカデミー講師のTです。
前回の記事では、第3回公認心理師試験の印象等を踏まえて記事を書きました。次なる第4回の公認心理師試験は現状2021年の9月が実施予定となっております。
今回は、そんな第4回公認心理師試験に向けた学習スケジュールをテーマにお話ししていこうと思います。しかしながら、一言に学習スケジュールと言っても、1人1人持っている経験や環境が異なります。第4回の試験が初挑戦という方もいれば、再挑戦という方もいらっしゃると思います。今回は、第4回の試験が初挑戦という方、その中でもこれまで心理学を腰を据えて学習したことがあまりないという方向けのスケジュールについて考えてみたいと思います。
そして今回は、私講師Tが自身の考えをつらつらと述べるだけではなく、私を含めて計3人の公認心理師・臨床心理士の有資格者に、2月~9月の期間で大枠の学習スケジュールを事前に考えてもらいました。それらをご紹介するという形をとりたいと思います。それでは早速見ていきましょう。

講師Tの考える学習スケジュール

スマートフォンでのeラーニングのイラスト(男性)
内容備考
2月試験の概要を把握し、学習環境の準備(学習時間・場所の確保、教材の用意等)を整える。公認心理師をとる目的や資格取得後どうなりたいか整理しておく。学習は継続性が重要なため、学習を習慣にするための丁寧な準備をする。その準備をする時間が学習のモチベーションにもつながる。
3~6月市販のテキスト等を用いて、試験範囲に一通り目を通し終えることを目指す。その際、自分では分からないところ・苦手なところを把握しておく。頭に知識を入れるインプットにウエイトを置く時期だが、インプットしたものはできるだけ問題演習(アウトプット)をすぐにして復習をこまめにすること。
7月模試、過去問、問題集などを使ってできるだけ多くの問題に触れ、知識の定着と苦手分野への対応を行う。直前に苦手分野に取り組むと自信を失うこともあるため、苦手分野はこの時期までにある程度克服しておきたい。
8月試験に向けて、本番に近い環境での問題演習を行う。基本的事項の確認に加え、自身が犯す可能性のあるケアレスミスがないかチェックしておく。時間配分、マークシートの塗り方、分からない問題が出てきたときの対処法など、試験本番をどのように取り組むかの予行演習をすると、本番の思わぬミスの防止につながる。
9月~試験自分の慣れ親しんだ教材等で知識の確認をしつつ、心身の調子を整える。知識だけでなく、試験会場へのアクセスや持ち物、試験本番でのタイムスケジュールなどの準備も忘れずに。

※補足
〇試験範囲については、第4回公認心理師試験のブループリント、過去問、市販のテキスト等(概ね過去問やこれまでのブループリントに則って作成されているものがほとんど)を参照するとよい。
〇分からないところ・苦手なところは自身で調べ考えるといった時間をかけることも重要。その一方、試験まで時間が限られていることも事実。そういう時は分かっている人に聞くのが一番早い。そういった意味で知り合い等一緒に学習する仲間や、サポートしてくれる人がいる環境を作れると強い。対面は難しくても現在はSNSでのつながり・情報発信やオンラインでの講座など、様々な媒体で公認心理師試験対策の講座や資料等が活用できる環境があるので、自身の状況・費用・時間効率等のバランスを慎重に検討して、活用できるものを活用していくと良い。
〇できるだけ多くの問題というのは、可能であれば初めてやる問題が多いと良い。繰り返しやることのデメリットは答えを覚えてしまうこと、ワンパターンの思考になりやすいことであり、それに慣れすぎると知らない問題に出くわしたときの対応力が養われない。
・時間配分として、一問あたりに使う時間、見直しに使う時間などを決めておくと、試験本番に向けた戦略(自分のスタイル)につながる。



講師Aの考える学習スケジュール

カウンセリングのイラスト(男性医師)
内容備考
2~3月 試験の概要確認  
②苦手分野の把握
公認心理師試験は試験範囲が広いため、自身の立ち位置を把握することが重要である。
4~6月①苦手分野の強化  
②現場の心理職の働き方の確認
知識を増やすことが第1目標になる。加えて、自身が習得した知識の活かし方のイメージを掴む。
7月問題演習合格ラインへの到達(当たったか外れたか)に囚われるのでなく、知識の補填や確認すべきポイントを見つける。
8月①問題演習
②知識同士の結びつきの確認
時間配分などを意識した問題演習を行う。また、類似概念の整理や関連事項の確認に時間を費やす。
9月~試験総合演習新しい教材に手を出すことは勧めない。

※全体を通じての注意事項

〇自分の(実力)現在地を確認する仕組みを作ること。特に、既に公認心理師資格を取得している人(試験に合格した人)達との差を意識する。試験に合格した人がどのような学習をしていたのか、ネット等で調べて参考にしてみると良い。

〇現場を意識すること。公認心理師資格試験には、実務家の試験という一面がある。そのため、用語の丸暗記で対応可能な問題は限られている。 実際に公認心理師が社会でどのような業務を行っているのかを論文や書籍、ネットで調べておくと、試験勉強としてやっていることが実践でどのように活きていくのかイメージが作りやすい。そのイメージが作れると、単純な暗記よりも深い学習につながっていき、試験勉強のモチベーションにもなる。

〇明確な根拠が必ずしも伴わない点に留意すること。公認心理師は「人を相手にする」仕事なので、突き詰めると、最も適切な対応はケースバイケースになる。状況に応じて、膨大な知識から必要な概念などを取り出す感覚が掴めると、理解が深まっていると言える。

講師Bの考えるスケジュール

カウンセラーのイラスト
内容備考
2~3月試験の出題傾向の把握
②好きな分野、興味のある分野、少しでも知識のある分野から学習
③学習の習慣
・ブループリントと過去問に一通り目を通す。
・苦手な分野から始めるといきなり壁に当たってしまう可能性があるため、取り組みやすい分野から始める。
・学習時間を確保できる時間帯を生活リズムから考える。朝型?夜型?
4~5月①好きな分野、興味のある分野、少しでも知識のある分野の学習
②苦手な分野の学習開始
・ブループリントを確認しながら、5月までに全範囲を一度は学習しているようにする。
6~7月①過去問演習
②模擬試験受験
③①・②の出題内容周辺の知識の定着化
・過去問は第1回から順に行う。
正答/誤答に関わらず知識として定着しないところや曖昧なところを把握し、定着を図る
8月①ブループリントの確認
②知識の定着化
・ブループリントに記載されている用語で知らない用語がないか確認する。
9月①総復習・似ているが少し違うものや、間違えやすい箇所、細かい数字などの確認を行う。

〇学習の際は、書店に売られている試験対策用テキストや現認者講習のテキストを用いた学習だけでなく、より専門的な書籍を用いることや法令検索を自ら行うことが大切です。

〇知識が定着しているか否かを確認するためには、テキストなどを見ずに紙に知識を書き出すと良いです。書き出すことが出来なかった箇所は色を付けておくと、定着していない箇所を視覚的に把握出来ます。

〇ブループリント(公認心理師試験設計表)とは、公認心理師試験出題基準の各大項目の出題割合を示したものです。これまでの傾向を踏まえると、概ね試験の半年前頃に公表されています。

まとめ

 今回、私を含め3人の公認心理師・臨床心理士が「第4回の試験が初挑戦という方、その中でもこれまで心理学を腰を据えて学習したことがあまりないという方向けのスケジュールについて」考えたものをご紹介しました。私講師Tが上記3つのスケジュールを元に重要と思われる要点を改めてざっとまとめてみたいと思います。

〇試験範囲を早めに確認すること!

 公認心理師試験の特徴の1つはその範囲の幅広さです。特に心理学というものを専門的に学んだ経験が少ない方は、その分学習にも時間が必要になります。それを肌で感じるためにも、また学習スケジュールを立てる上でも、過去問やブループリントを通して試験範囲をなるべく早く確認することが、重要であるかと思います。また、試験範囲が広いということは当然、1度学習してすぐに定着するものではなく、繰り返し演習等をすることで定着させていく時間が必要ということです。つまり、試験範囲となる領域の知識を早めに網羅的に学習し、演習を通して定着・深化を図っていくことが求められます。したがって、早めのスタートを切れるかどうかが重要な要素となります。

〇正解できる=得意ではない!
 前述の各スケジュールにおいて、「苦手なところ」という言葉がいくつか出てきたと思います。もちろん苦手なところというのは、試験で点数が取れないところが一番わかりやすい例ですが、では逆に点数が取れるところが「得意なところ」かというと、実はそうとも限りません。極論、公認心理師試験はマークシート試験なので、5択であれば全く知識がなくても5分の1で正解できます。消去法で絞り込んでいって2択まで絞れれば2分の1になります。つまり、問題として正解できていたとしても、その問題で扱われていた知識をしっかり押さえられていたかどうかは別の話だということです。そういった意味で、問題を解いた後は、正解不正解だけにこだわらず、1つ1つの選択肢レベルでふりかえりをしていく姿勢が重要です。繰り返し問題を解いたり学習をしても点数につながりにくい、点数が安定しない、自分の言葉で人に説明することができない分野は、得意とは言えない=苦手としてとらえ、対策を考えることが必要になると思います。

〇実践を見据えた学習をすること!

 公認心理師は心理学を素養とする高度専門職・実践家の資格です。試験内容としても、事例問題や心理査定の解釈等、実践で必要となる知識を問う設問が見受けられます。また、学習をする上でも、学んだ知識がどのように活かされるかイメージ持っているのとそうでないのとでは、モチベーションに大きな違いが生まれます。加えて、一般的なテキストや参考書というのは、前回の記事で述べたように抽象的な事項、普遍的に通じる事項が内容の中心となりやすいです。したがって、具体的なイメージを持つためには、個別の事例や実践に触れることが必要です。特に心理検査については、一般の方にその詳細を知られることが基本的に禁じられています。一般の方に知られすぎてしまうと検査の結果に影響を及ぼす恐れなどがあるためです。ゆえに、一般的なテキストや参考書で心理検査について記されているのは、検査の概要までなのがほとんどです。したがって、専門書や論文を読む、実践をしている人に話を聞く・教えてもらう等、自分自身で深めていく作業が必要になるかと思います。

〇試験本番に向けた演習をすること!

 一発勝負の試験で一番怖いのはミスです。実際試験本番で「落ち着いて読んでいたらできたのに」「時間配分がうまくできなくて見直しができなかった」「分からない問題が出て焦ってしまい、落ち着いて問題が解けなかった」等、本番で思うようなパフォーマンスができないということはよくあることです。それをできるだけ防ぐためには、試験本番を見据えた準備を丁寧に行うことが重要です。問題を何分で解くのか、見直しにはどれぐらい時間を使うのか、分からない問題にはどのように対処するのか、自分がしやすいミスは何か、しっかり戦略を練るために試験本番を見据えた演習をスケジュールに組み込むと良いかと思います。

最後に

 いかがだったでしょうか。効果的な学習スケジュールというのは人により異なりますので、上記で示したスケジュールが正解というわけではなく、あくまで1つの考え方として、自分の状態を考慮しつつ参考にできるところは参考にするといった具合で捉えていただければと思います。第4回の公認心理試験に向けた学習スケジュールを考えるうえで、少しでも参考になれば幸いです。

【今回の一言】
うまく行っているときには水を差し、うまく行ってない時は支える。by院生時代の教員

 ※今回の一言補足

 この言葉は院生時代の教員に言われた言葉で、リスクマネジメントのシンプルな考え方の1つとして大事だなと思っている言葉です。うまく行っているときは人間調子にのったり、準備を怠ったりしがちで、そうしてるうちに思わぬ失敗などをすることが良くあります。そうすると反動が意外と大きいものです。逆にうまく行かない時は、何をするにも臆病になったり意欲が失われたり、自暴自棄になったりすることで、状態が膠着してしまうことがあります。こういった観点から、例えばクライエントがなにかうまく行っているときにはあえて支援者として多少水を差しておく、逆にクライエントがうまく行っていない時は、支援者として支持的にサポートするということがリスクマネジメントの1つだという風に考えています。


ファイブアカデミー情報
現在、第4回公認心理師試験に向けた様々な講座や模試等を運営・企画しております。過去問を使用した演習講座や本番に向けた実力・知識確認のための模試等、学習スケジュールを考える上でお役立ていただければと思います。詳細は下記URLからご覧ください。
https://www.5academy.com/zenryoku-koza/tsugaku/course
また、2021年2月は受験対策個別セミナー(公認心理師対策・臨床心理士対策・心理系大学院対策)を開催中です。各試験の対策法、学習法、学習スケジュール等、ご自身の状況に合わせて考えていく上でアドバイスがほしいという方や不安な点がある方など、ぜひご活用ください。詳細は下記URLからご覧ください。
https://www.5academy.com/seminar/787