公認心理師・臨床心理士試験と心理系大学院試験の違い

皆さんこんにちは。ファイブアカデミー講師のTです。

今回のテーマは「公認心理師・臨床心理士試験と心理系大学院試験の違い」についてです。

心理系資格初の国家資格である公認心理師資格の誕生や、社会における心の健康に関する問題意識の高まりなどから、心理職を志す人が増えているかもしれません。

心理系資格は様々なものが存在していますが、主要なものは前述の公認心理師、民間資格では臨床心理士が挙げられます。そして、この両者の資格を取得するためには、基本的には(必ずではありません)心理系大学院に入学し、必要な科目を履修して卒業する必要があります。

私自身もかつて心理系大学院試験・臨床心理士試験・公認心理師試験を受験し、現在はこれらの試験対策を指導しています。その経験に基づいて、各試験の大まかな概要と特徴についてまとめていこうと思います。では行きましょう!

【各試験の概要】

※受験資格等は多岐にわたるため割愛します。あくまで実際の試験問題に焦点を当てた概要となっていますのでご了承ください。

心理系大学院試験

・筆記試験

専門…穴埋め、選択式、記述など

英語…穴埋め、選択式、和訳、要約など

・面接試験(個人/集団形式)

志望動機、研究計画書、自身のことについて、学部時代のことについてなどの口頭質問

公認心理師試験

・筆記試験(マークシート式)

科目:ブループリント(試験領域を示すもの)参照

→基礎心理、臨床心理、関係行政論など

臨床心理士試験

・筆記試験(一次試験/マークシート、心理学に関するテーマの論述試験)

科目:心理学

・面接試験(二次試験=一次試験合格者のみ対象、個人形式)

臨床心理士の志望動機、現在の職業、これまでの臨床経験などについての口頭質問

各試験の大枠は上記の通りです。ここからは各試験の特徴を、実際に受験した立場、そして試験対策として指導をする立場の経験を踏まえて、「公認心理師・臨床心理士試験と心理系大学院試験の違い」を述べていきます。

※あくまで個人的な考えですので、参考程度にとらえてください。

結論から言うと、受験した時も、指導する時も対策を考えるのが難しいなあと思う(思った)のは個人的には心理系大学院試験です。

心理系大学院試験の特徴

理由①~公認心理師・臨床心理士試験とは試験形式が本質的に異なる~

 公認心理師・臨床心理士試験はマークシート形式の試験なので、いくつかの選択肢から正答を選ぶことが求められます。つまり、答えを「選ぶ」試験です。極論を言えば、全く知識がなくても何分の一かの確率で正答できるということです。

対照的に心理系大学試験では、大学院によって出題の傾向は異なるものの、多くの大学院では論述式の出題がなされます。論述式ということは、自分で0から答えを「作る」試験であると捉えることができます。当然、知識や理解力がなければ正答ができません(部分点をもらうことはできるかもしれませんが,何も解答が書けなければ点数はもらえません)。これは、それこそ基礎心理の記憶の領域で言うところの再認と再生の違いです。

前者ではある程度、暗記した知識をベースに、正誤を判断することで対応ができますが、後者は知識を暗記するだけでは不十分で、解答を作る構成力や文章の表現力、知識同士の関連を理解すること等が求められます。したがって、単純にテキストを読んでいるだけでは対応が難しく、実際に解答を作り、問題の求めていることに応えられているか、論理的な表現になっているかなどを訓練し、推敲を重ねていくことが不可欠です。なおかつ、大学院によって論述の出題のテーマは様々で、実際に実践を積む前の段階の受験生にとってはハードルが高いことが非常に多いです。

例えば…

・ある事例が記述されており、その事例に対する見立てや支援方法を1000字程度で述べる。

・各心理療法の治療者とクライエントの関係性の違いを比較して述べる。などなど

理由②大学院により試験の特徴が異なる

 前述のように、大学院によって出題の特徴が千差万別です。公認心理師・臨床心理士試験はそれぞれの過去問がありますが、心理系大学院試験では学校ごとの出題の特徴に合わせた対策が求められます。

理由③対策に時間がかかる

 心理系大学院試験の対策には、理由②で述べたように大学院ごとの対策が必要になります。つまり、どの大学院を受験するかを考えて選ぶというプロセスが必要になります。どの大学院を志望するかは受験生にとって重要なことです。志望校を決定するにも時間が必要です。加えて、心理系大学院試験では研究計画書の提出が求められることが多いです。この研究計画書の作成も一朝一夕ではすみません。しかもこの研究計画書はただ提出するだけでなく、面接試験で説明を求められることも多いため、どのように伝えるかといった面接の練習の時間も必要になってきます。きわめつけは英語の存在です。大学時代に英語に全く触れておらず、忘れてしまったという状態になりがちな科目でもあります。

ですので、公認心理師・臨床心理士試験と比較すると、試験のために準備する・考える時間やプロセスが人によって異なり、対策の仕方も多様で、時間がかかることが多くなりやすい印象があります。

最後に

いかがだったでしょうか。今回は「公認心理師・臨床心理士試験と心理系大学院試験の違い」をテーマに述べてきました。これから心理系大学院を受験することを考えている人の参考になれば幸いです。

 現在はコロナウイルスの影響で、各試験の日程がずれたり、試験形式が変わっている大学院も少なくないようです。今回述べた試験の概要についてはあくまで参考程度に捉えていただき、適宜今後の試験に関する情報をチェックして、対策を行う姿勢が肝要だと思われます。

 社会の中で心理職が活躍し、心の健康の保持・増進に寄与していくためには、心理職を養成していくプロセスの1つである各試験のシステムについて、社会情勢の変化を踏まえながら今後も継続的に検討し、意見を交換していくことが大切だと思います。そのためには、これらの試験を経て現在心理職として活動している人、そしてこれから試験を受けようと考えている人等、様々な立場の考えや印象を捉えることが求められると私は思っています。皆さんは各試験の在り方について,どのように感じているのでしょうか?

それでは今回はここまでにしようと思います。最後に私が心に残っている言葉を載せて終わりにします(テーマとはそこまで関係はありません笑)。読んでいただきありがとうございました。

「今を受容できて初めて過去は過去になる」

(指導教員からいただいた言葉で、出どころは不明です。指導教員オリジナルなのかな?)