大学院生活を振り返る

 皆さんこんにちは。ファイブアカデミー講師のTです。

 年度末になり、新年度へ向けた様々な準備に追われている方も多いかと思います。個人的には、様々な変化が起きやすい3月、4月は何かと落ち着かず、心身共に疲れやすくて苦手な時期でもあります。私が大学院に入学して2日目の夜間講義を受けている最中、特に思い当たる原因もないのですが、急激に寒気を感じ、帰宅後40度の熱を出して体調を崩しました。病院を受診しましたがインフルエンザ等ではないとのことで、2・3日休んだらよくなりました。思い返すと、それ以外でも春頃に体調を崩したエピソードがいくつかあり、やはり私はこの時期に体調を崩しやすいようです。皆様はいかがでしょうか?

 前置きが長くなりましたが、今回はそんな体調を崩すことから始まった私の大学院生活を振り返ってみたいと思います。公認心理師や臨床心理士を目指し、心理系大学院への入学を希望している・検討している方が、大学院での実際の生活のイメージがつかめると良いなと思っています。

 ただ、実際の大学院の生活は、大学院によって、また個人によって異なることが大前提になるので、あくまで参考程度でお読みいただければ幸いです。それでは見ていきましょう。

<講師Tの大学院生活> ~環境面の概要~

 地方の大学院であり、当時はバイクを所持していたため、バイクで通学していました。雨天時は電車を利用していましたが、本数が少なく(1時間で1・2本)、交通面では不便であり時間を要しました。地方の大学院を検討している場合、通学の利便性はできるだけ確保することをおすすめします。ただでさえ大学院生活が忙しいので、通学に苦労すると心身共につらくなると思われます。

 私が通っていた大学院は社会人学生の方もいらっしゃったので、夜間授業も行われていました。朝の一番早い授業の開始時間は9時ごろで、最終授業の終了時刻は21時ごろでした。学校内には院生用の部屋(院生室)があり、机、PC、冷蔵庫、レンジ、エアコンなどが設置されており、必要に応じて利用することができました。他学科の学生との交流はほとんどありませんでしたが、同じ学科の同期10名程と一緒に過ごす時間は、非常に長く密接なものでした(色々ないざこざもありました笑)。
 学内には地域の一般の方が利用できる臨床心理相談室があり、そこでのケースを中心とした学内の実習と、一般の病院や福祉施設、行政施設等の学外の実習機関が設けられていました。
 学科の教員の方は5名ほどで、それぞれ異なる専門分野や心理的アプローチの方法をお持ちでした。長期休みの期間などは他の機関の方が2・3日ほど外部講師として来られての集中講義などもありました。

修士1年前期

 この時期は学校での講義メインの生活でした。週1回学科の全教員と全院生が集まるカンファレンス(相談室のケースやグループワークの内容を担当している院生が報告し、教員から助言や指導を受けたり、院生同士で意見交換などをしたりする)は2年間通じて行われ、右も左も分からないまま参加し、意見を求められたときは苦労したことを覚えています。また、報告する院生側の立場としても、教員からありがたいご指摘や追求を受ける場としてプレッシャーのかかる時間でした。ですが、様々な見立ての観点、支援者としての自身の課題や癖などを学ぶ貴重な時間でもありました。

 こういったカンファレンスに加えて、もちろん座学の講義もあり、毎週のようにレポートや文献の要約等の課題が課されていました。座学だけでなく、カウンセリングのロールプレイの講義が修士1年の通年講義であり、教員と同期の前で行うロールプレイはとても緊張したのを覚えています。

 また、研究室・指導教員も入学後すぐに決定しました。どの指導教員の研究室に入るかも、大学院生活の重要なファクターです。研究室・指導教員によって、独自の仕事が課せられることがありました。雑務ももちろんですが、それだけでなく教員によって専門としていることが異なったので、その指導教員独自の臨床活動に同行させてもらうといった学びの場も提供していただきました。
 ざっくりまとめると、学校での講義中心の生活に慣れることに必死でしたが、計画的に課題に取り組むことができれば、しっかり休息の時間をとることはできました。ただし、カンファレンスやロールプレイといった今まで経験したことのない緊張感を味わう機会が多く、慣れるまではメンタル的にきつい時期でもありました。アルバイト等をやる余裕はありませんでしたし、他の同期もアルバイトをしている者は少なかったように記憶しています。

修士1年後期

 前期と同様の講義、カンファレンス等に加えて、相談室の電話受付およびケースの担当が始まりました。電話受付は同期とシフトを組んで対応し、相談希望の電話が来たら概要を聞き、相談日や面接者の調整等を行うといった対応をする必要がありました。面接への陪席や、実際に面接を担当するなど、実践を通した学びの時間が徐々に増え始めました。当然面接を担当するようになると、カンファレンスで報告する側になってきます。また、実践をし始めたので必然的にスーパーヴァイズ(SV)を受ける時間も増え始めました。実際は学生である大学院生だとしても、専門家・プロとして相談室の利用者は捉えますし、そこに貴重な時間やお金をかけているわけですから、分からないながらも必死になってクライエントと向き合っていたことを覚えています。

 同時に、修士論文のテーマの方向性や計画についても少しずつ考えていく時間が必要になってくる時期でもありました。
 以下に、修士1年後期時の主な1週間のスケジュールを記します。
月曜日
(午前)フリー
(午後)講義→レポート作成→講義

火曜日
(午前)講義
(午後)ケース陪席→SV→記録作成→講義

水曜日
(午前)カンファレンス
(午後)フリーorグループワーク活動計画打ち合わせ

木曜日
(午前)講義
(午後)レポート作成→講義2コマ

金曜日
(午前)グループワーク打ち合わせ
(午後)グループワーク→振り返り→グループワーク記録作成

土曜日/日曜日

フリー(レポートなどの課題が終わっていれば…)
※土日に集中講義や学会運営が入る時もあり

修士2年前期

 修士1年時のような座学の講義は少なくなり(カンファレンスはあります)、卒業されていった先輩から引き継いだケースを担当するようになります。したがって、実践・実習が中心の生活になってきます。また、学内だけではなく外部の機関への実習、修士論文の調査・執筆、就職活動、などが加わります。このころは金銭的な理由などからアルバイト(心理業務関連)も始めました。指導教員から心理業務に関するアルバイトを紹介してもらえたこともあり、大学院生でありながら心理職として仕事をしていました。この時期の主な1週間のスケジュールを簡単にまとめてみると、以下のようになります。

月曜日

(午前)電話受付

(午後)入電あれば受付報告書作成→学内ケース→SV→ケース記録作成→修論 

火曜日

(午前)グループSV

(午後)学内ケース①→SV→ケース記録作成→学内ケース②→SV→ケース記録作成

    →カンファレンス報告書作成→夜間講義2コマ

水曜日

(午前)カンファレンス

(午後)アルバイト

木曜日

(午前)フリー

(午後)学内ケース①→SV→ケース記録作成→グループワーク活動の計画・準備→夜間講義

金曜日

(午前)グループワーク準備・活動

(午後)振り返り・SV→記録作成→次回活動打ち合わせ→修論ゼミ

土曜日

(午前)外部実習

(午後)実習記録作成

日曜日

(午前)フリー

(午後)外部実習→実習記録作成

※こういったスケジュールに加えて、時期によっては修論の調査や就職活動・短期の外部実習で遠方に出向いたり、学会の運営に駆り出されたり、楽しい(?)修論進捗報告合宿や各種飲み会など、様々なイベントが舞い込んできました。

修士2年後期

 講義が落ち着き、ケースと修士論文、終わっていなければ就職活動に専念する時期です。修士論文は提出するだけではなく発表会もあったため、論文を執筆したあとも発表に向けた資料を別途に作成する必要がありました。指導教員に出しては修正、出しては修正ということを繰り返しました。
 ケースについても、終結するものがあれば終結として報告書を作成し、引き継ぐものについては引き継ぎ報告書を作成し、ケースの内容と引き継ぐ後輩の特徴などを踏まえて、誰に引き継ぐかを検討するといった作業がありました。 
 私の場合、修士2年の後期は、学校にある院生室に寝泊まりをして過ごしていました。せまいソファーで縮こまって寝るのは大変でしたが、今となればよい思い出です。

最後に

 いかがでしたでしょうか?私が通っていた当時とは違い、今現在は公認心理師養成のカリキュラムに対応した大学院が多くなっているので、当時の私の院生生活とはまた違ったものになるのかもしれません。

 しかしながら、生半可なものではないということは共通していると思います。実際、入学後に休学や退学していく学生も少なくありません。時間や労力といった物理的な観点はもちろんのこと、院生生活では講義やケースを通して自分自身と向き合っていく時間を多く過ごすことになると思います。それは、自分の見たくない弱さや課題を直視することにもなりえます。つらく苦しい時間が多いかと思いますが、そのような時間を経ることで心理臨床家としての土台が形成されていくはずです。もちろん、楽しいこと・うれしいこともたくさん経験できると思います。つまり、心理系大学院への入学を目指すということは、入学試験だけでなく入学後も踏まえて、それ相応の覚悟が必要だということです。

 この記事が、心理系大学院への入学を考えている方の少しでも参考になれば幸いです。

今回の一言
Be quiet,Do squat.(黙ってスクワットをやれ)

※今回の一言補足
 この言葉は私が大学時代に親しかった友人から教えてもらったものです。友人はボディビル部に所属しており、部室を案内してもらったときに室内にこの言葉が掲げられており、当時大笑いしたことを覚えています。
 ですが、今思うとなるほど一理あるなと感じます。人間は賢い生き物なので、何か行動を起こす際は前もって考え、できるだけ合理的な手法を選択したり、合理的でない場合は行動をするのを辞めたりできる生き物です。
 しかしながら、こういった思考は過剰になりすぎると、考えすぎて起きるかどうか定かではない小さな不安などに囚われ、何も行動をとれなくなってしまうことがあります。色々なことに対して推測し、合理的な選択や安全な選択をしたいというのは自然な欲求ですが、世の中にはどうしても蓋を開けてみないと(実際にやってみないと)分からないことは少なくありません。
 前もっての推測や見立てというのはあくまで推測や見立てにすぎず、実際にそのとおりになるかは蓋を開けてみないと分かりません。全く無計画に行動をするのも危険ですが、ある程度考え検討が済んだことは、それ以上いくら考えを重ねても、結局やってみないと、その時が来ないと明らかになることはありません。そんな時は、「実際にやってみる=行動に移してみる」というプロセスに潔く移行することが、前進への一歩となるのかもしれません。
 「Be quiet,Do squat.」にはきっとこういった意味合いが込められているのではないかと私は解釈しています。